筆者自身が添乗員として実際に訪れた、フランスの美しい村を紹介する第8回目は、前回までのミディ=ピレネーからブルゴーニュへ移動して案内する、ヨンヌ県のノワイエ・シュール・スランだ。
人口わずか800人弱、スラン川の蛇行でできた土地に広がる、中世から時が止まったかのような佇まいの小さな村である。
初めて、フランスの美しい村に訪れたのはミディ=ピレネーだったが、旅行素材として本格的に調べたのは、このシリーズの番外編にも書いたこの業界の大先輩、菊間潤吾氏著書の「フランスの美しき村(新潮社)」がきっかけだった。
そして、その本には、もちろんこのノワイエ・シュール・スランのことが書かれてあり、すぐにツアーに組み込んで出かけた。
ここは、2年続けて2回訪れている。
こんな小さな村のどこに、その魅力があるのか?
宿泊施設がないほど小さな村
訪れた当時は、近隣に若干のキャンプサイトがある程度で、村の中には宿泊施設はなかった。
なにしろ、人口は上述の通り、いざ訪れてみるとマーケットや薬局はあるものの、歩いている村人は数えるほどしかいない。
村の入口のアヴェロン門から通じるメインストリートは、多少にぎわいを感じるものの、朽ちた廃屋が目立ち、カフェは2軒しかなかった。
そのうちの1軒は、先日「ヨーロッパで出会ったネコたち」で書いた、カフェのカウンターを占領する猫がいたカフェだ。
ところが、この記事を書くにあたりGoogle Mapで詳細を調べたところ、ずいぶんと宿泊施設のマークが増えたような気がする。
それぞれリンクしてみると、ウェブサイトがないような小さな民宿やB&Bなどだ。
筆者が訪れたのは、スケッチを目的としたグループを引き連れてだったので、当然グループサイズの宿泊が可能な施設が必要不可欠だった。
結局、宿泊拠点をオーセールに置き、ノワイエ・シュール・スラン、スミュール・アン・オーソワ、このシリーズでも書いたフラヴィニー・シュル・オズランの、ヨンヌ県の3村をバスでめぐることとなった。
ちなみに、スミュール・アン・オーソワは美しい村に登録されていないが、個人的には登録されても良いと思うくらいの素晴らしい村だ。
また、この後書く予定のヴェズレーには、宿泊施設があるので、そこを拠点にしても良いと思う。
「フランスの美しい村」内に宿泊するには、個人旅行が良いということになる。
牧歌的な風景こそ美しい村たる所以
いくつもの美しい村々を訪ね歩くと、漠然とだが
「これが、フランスの美しい村に登録される根拠か」
と思わせるところがある。
ミディ=ピレネーのオートワールもそうだが、ここノワイエ・シュール・スランでもあちこちで見られる牧歌的風景だ。
農業がメインの産業であるフランスは、ワイン畑、牧場などが全国いたるところにある。畑と牧草地と中世の建物が組み合わさってできる風景は、フランスならではなのだろう。
ノワイエ・シュール・スランも、主要産業はワイン作りで、カタツムリ(エスカルゴ)が共存する葡萄畑があり、旧市街の外には放牧された馬達がいる牧草地がある。
フランスならではの塔は、貴族の館であるもの以外は穀物倉庫(サイロ)であることが多い。
美しい村と農業は密接なつながりがあるようだ。
そして、ヨンヌ県の美しい村は全て、ブルゴーニュのコート・ドール(黄金の丘)、一大ワイン産地と密接な関係にあると思う。
そんな、牧歌的なノワイエ・シュール・スランの画像を、いくつか紹介する。
そろそろ、日本人が大好きなボジョレー・ヌーボーの季節だ。
ボジョレーも、広域ではブルゴーニュに属するワイン産地だ。
今宵は、ブルゴーニュ・ワインを飲んでみようかと思う。
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