筆者自身が添乗員として実際に訪れた美しい村を紹介する第4回目は、前回までのピエモンテ、リグーリアから少し目先を変えて紹介したい。サン・マリノ共和国とボローニャのちょうど中間あたりに位置し、3つの高い岩壁の麓に広がるテルメの村、エミリア=ロマーニャ州クーネオ県ブリジゲッラだ。
日本ではほとんど知られていないこの小さな村はイタリアでは大した村で、以下5つの称号を持っている。
- イタリアの最も美しい村々
- オレンジ・フラッグ(イタリア観光協会が認めた町)
- Citta Slow(スローフード推進の町)
- Citta dell’Olio(イタリアオリーブオイル協会認定の町)
- Citta del Vino(ワインの里協会認定の町)
さらにはイタリアの温泉テルメもあり、日本ではほとんど知られていないこの小さな村に毎日大型バスが到着しては多くの観光客が来ていた。特産物はブリジゲッラのオリーブオイルと、村を囲む地域で作られるワイン、サンジョベーゼ・ディ・ロマーニャ。イタリアを代表する赤ワインの品種のひとつ、サンジョベーゼは日本でもよく飲まれている。
3つの高い岩壁
ブリジゲッラの居住区は平たんな村だが、この村のシンボルの城塞(Rocca)、聖母マリアの聖所記念堂、時計塔がそれぞれせりたった岩壁の上に建っている。
まずはこの中の一つ、時計塔に登って村を見下ろしてみた。鉄製の手すりに囲まれた階段をひたすら上ると、時計塔の足元に到着する。そこが見晴らし台のようになっていてブリジゲッラの赤い瓦屋根をかぶったカラフルな家並みを見下ろすことが出来る。秋の日差しに照らされた屋根と周囲を囲む山々の色とのコントラストは、けっして日本では見れない美しさだ。
対する岩壁へ目を向けると城塞の奥に聖母マリアの聖所記念堂が重なって見え、3つの岩壁があるようには見えない。聖所記念堂のある岩壁だけ、少し離れているようだ。
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昔はこの岩壁を上るのにロバを使用していたそうだ。そのためのロバ小屋が麓にあったそうで、いまでもロバ小屋を改装した住宅が一列に並んでいるところがある。通称「ロバの道(Borgo e Via degli Asini)」がそれだ。道といっても長屋造りの建物の2階部分の通路の事を指している。
サン・ジョバンニ・イン・オッターヴォ教区教会
村の中には特筆すべき教会はないようだが、ホテルの主人から郊外に素晴らしい教会があるから行ってみるといいと言われた。
村人たちに片言でそのことを伝え場所を聞いたのだが、ホテルで聞いた教会名を言っても通じない。やっとのことで村人の一人が「ああ、『キエーザ・ロマニカ』ね」と理解してくれ、道順を教えてくれた。村人には通称でしか通じないようだ。
ブリジゲッラの村はずれから国道沿いに30分は歩いただろうか、どうにかその教会、サン・ジョバンニ・イン・オッターヴォ教区教会に辿りついた。周りは一面オリーブ畑。その中に建つその教会は909年建造、エミリア=ロマーニャ最古の教会だそうだ。
どちらかというと小さな教会なのだが、シンプルながら長い年月イタリアの歴史を見続けてきたその姿には圧倒される。ブリジゲッラ郊外ではあるが、美しい村に登録された理由のひとつなのかもしれない。
Hotel Meridiana
ブリジゲッラには3泊した。お世話になったのはHotel Meridiana、3っ星クラスだが居心地の良いホテルだ。
上述の通り、ヨーロッパ各地(滞在中はオランダ、ドイツからの観光客が宿泊していた)から観光客がこの村を訪れるため、美しい村に登録されている村あるホテルとしては珍しい大型ホテルだ。旧市街までは途中線路を渡って10分ほどかかるため少々不便だが、それをカバーするに値するホスピタリティを持っている。
最終日の夜、ちょっとした余興があった。レストラン奥の中庭に宿泊客を集め、村の音楽隊が演奏を始めた。食事中の良いBGM程度に聞いていたのだが、他の国の宿泊客がやけに盛り上がっているので、早々に食事を済ませて中庭に出た。
音楽隊の中央にいたのはホテルの主人、なにやら長いひも状のものを音楽に合わせて振り回している。それがリズムに沿ってパチンと音がした。振り回していたのは革製の鞭、その先が風を切って音がするようだった。
物珍しさとアルコールが入っていることもあり、宿泊客は大盛り上がり。ホテル主人自ら余興でもてなしてくれていたのだった。
個人的には、ブリジゲッラは美しい村というよりは日本の下町的要素を持っていると感じた。ホテルの主人がそう感じさせたのかもしれないが、人情味に溢れる村人たちばかりだった。
村というよりは町といった規模で、駅があるので鉄道を利用して訪れることが出来る。また旅人を暖かく出迎えるホテルがある。きっと一度は訪れるに値する美しい村だ。
ブリジゲッラのフォトギャラリーは以下をご覧いただきたい。
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