アンギアーリ|私が訪れたイタリアの最も美しい村々

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アンギアーリ1

筆者自身が添乗員として実際に訪れた美しい村を紹介する第7回目は、トスカーナア州アレッツォ県のアンギアーリだ。レオナルド・ダ・ヴィンチの消えたフレスコ画「アンギアーリの戦い」で有名な坂道の村である。

アンギアーリという名前は知っていても、ほとんどの人はフレスコ画のことを認知しているのみで、アンギアーリという村そのものを知っている人はわずかだろう。普通の観光ツアーで訪れることは皆無に等しく、当社が行っているようなスケッチ旅行のモチーフとして選ぶくらいなものだ。

ヨーロッパの村は丘の上にあることが多く、坂道が多いのは当たり前だ。しかしアンギアーリの坂はそんな当たり前の坂とはまるで違う。写真からは判断しにくいと思うが、村の中心を走るこの坂道は、普通に歩くのも困難なほどの急勾配だ。

この村はサンマリノ共和国からモンタルチーノへの移動途中に立ち寄ったため、半日くらいしか滞在しなかった。村と言っても規模は大きく、町と言っても良いくらいの大きさだ。加えてこの坂道、歩き回るにはかなり大変と予想し、ランチで入ったレストランのおやじに紹介してもらって英語の通じるタクシーを呼んでもらった。いつものように一人でひたすら歩きまわる探索ではないが、それゆえ徒歩では得られない収穫があった。

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旧市街

アンギアーリは一本の急勾配の坂道を中心に、道に沿うように左右に家並みが広がっている。バスは坂の頂上の公園近くに停車したので、まずは頂上からこの急な坂道を降りてみる。すると坂の途中の右手にガリバルディ像があるバルダッチョ広場があり、その奥に旧市街が広がっていた。

アンギアーリ2

旧市街は複雑に細い路地が入り組んだ迷路のようだ。秋の日差しはまだ残暑を引きずっているようで、容赦なく照りつける。その日差しと建物の影のコントラストは非常にはっきりしていて、日陰に入ると夕暮れ時のようだ。
途中にタリエスキ邸博物館がある。この建物の前の小道は石段があり、古い石造りの壁がありと、なかなか絵になりそうだ。

アンギアーリ3

路地を進み、道なりに曲がると突然照りつける日差しに戻り、ちょっとした広場(ポポロ広場)に出た。その奥には大きな鐘楼が見える。イタリア語でトッレ(Tolle)、時計塔だ。

アンギアーリ4

アンギアーリは陶器の村でもあり、多くの陶芸家がギャラリーやショップを開いている。そのためアートの村ともいわれるようだ。

古戦場跡

一通り旧市街を回った後、坂道を登って1軒のレストランに入る。中心の一本道にアウトドアテラスを設け、そこで食事が出来るようになっている。建物でうまい具合に日よけが出来、涼しい風が吹いてくるテラスでワインとともに秋の味覚、トリュフを味わう。この皿はおそらく、この村で作られている陶器なのだろう。

アンギアーリ5

食事を終えた後、店のおやじにさっそくタクシーを呼べるか聞いてみた。するとすぐに1軒のタクシー会社のカードを手渡してくれたので電話してみると、10分ほどで来るという。ならば食後のエスプレッソを飲みながら待とうと思い追加でオーダーして待っていたところ、そこはさすがイタリア人、10分が20分になった。
若いドライバーは気さくで、歩いていけないような、でも見せたいところへ案内するというので言われるままに行ってもらった。最初はアンギアーリを一望できる高台へ。そこはアンギアーリの全景写真が撮れるというのだが、あいにく一部工事中で思うような一枚が取れない。イタリアはいつもどこか必ず修復をしている。日本同様地震が多く、また観光立国のため古い建物を修復して保存しているからだ。

アンギアーリ6

次は坂道を下り、アンギアーリの一番低いところへ向かった。周囲はのどかな田園風景が広がっていて、そこに小さな記念碑が建っていた。ここがまさにアンギアーリの戦いの跡だという記念碑だ。1440年6月29日、フィレンツェ及びローマ連合軍とミラノ軍とのわずか1日の戦いは、連合軍の勝利で終わった。アンギアーリはフィレンツェ共和国の一部だった。古戦場は日本もイタリアも変わらない。

アンギアーリ7

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ソヴァーラ教区教会

ドライバーは「ここから2キロほどのところにとても美しい教会があるから行こう」といって、もうすでにその道を進んでいた。町を外れ、森とタバコ畑が入り組んだところに1軒のロマネスク様式の教会が建っていた。9~10世紀建造のソヴァーラ教区教会だ。

アンギアーリ8

自身はキリスト教ではないので教会にはなじみがないが、ブリジゲッラのサン・ジョバンニ・オッターボ教区教会(「ブリジゲッラ|私が訪れたイタリアの美しい村々」を参照)のように、シンメトリーのファサードを持つ石造りの教会にはなぜか惹かれる。

せめてこの教会がもっと村の中心にあれば、ツアー参加者みんなにその存在を教えてあげたいのだが、ここまで歩いてくることは出来ず、また決められた日程以外のことをバスのドライバーに突然伝えても、ツアー参加者を集めてバスでここへ来るという時間がない。その点では実に残念だが、それくらい美しい教会だ。

最後に集合場所としておいた坂の上の公園近くのバールで、タクシーのドライバーと一休み。とても気さくなドライバーに、短い時間ながら中身の濃いアンギアーリ案内をしてもらったことに感謝。
「次回トスカーナに来たときはアンギアーリでなくても電話をくれ」と言って、またカードをくれた。もちろんそうするつもりだ。わかりやすい英語で案内してくれ、個人旅行をする人にも紹介できるタクシー会社だと思った。
バールの横の公園からもアンギアーリの町並みを一望できた。ここは文句なしに美しい村だ。

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