マッサ・マリッティマという町をご存知でしょうか?イタリア、トスカーナ州グロッセート県にある町です。
海外の絶景や美しい風景を求めて旅行を計画するとき、世界遺産、あるいはフランスやイタリアの美しい村々はそのきっかけや目的になります。しかし、何の称号も得られていない、それでいて魅力ある町や村は数多くあります。筆者自身が訪れたそのような無冠の町や村を少しずつ紹介し、旅の目的地になればうれしい限りです。
マッサ・マリッティマも何の称号もない、無冠の町。ウィキペディアで調べても大した説明がありません。ここを訪れる際の事前調査でも、あまりにも得られる資料の少なさに苦労しました。それにもかかわらず、なぜこの町をツアーに組み込み、訪れるに至ったか?そこから紹介してみようと思います。
町の選択の決め手
宿泊施設の規模から
マッサ・マリッティマを訪れた時のツアー日程は、ヴェネチアからローマまでのルート上にある美しい村や世界遺産に登録された町などをスケッチして周遊するものでした。詳細は以下当社ウェブサイトを合わせてご覧ください。
日程はすべて自分で考え企画します。それをツアーオーガナイザー(幹事さん)と相談し、ツアーが決定します。そしてこの日程にマッサ・マリッティマが組み込まれた最大の理由、それは、
でした。スケッチの目的は、近隣でイタリアの美しい村々に登録されたチェルタルドでしたが、この村にはグループサイズの人数で宿泊出来るホテルがありません。そのため、チェルタルドまで日帰りが出来、かつ大人数で宿泊できる宿泊施設がある町を拠点にすることでした。それがたまたま、マッサ・マリッティマだったのです。
しかし、単なる拠点とはいえそこに数泊するのですから、なんらか魅力がある町であることが必要です。本来チェルタルドへの拠点であれば、もっと近くてホテルもあるシエナやフィレンツェでも良かったのです。しかし、初めてこの周辺を訪れるグループならいざ知らず、ご案内するグループはイタリアへ何度もスケッチ旅行に来ています。シエナやフィレンツェはかつて何度か訪れているので、なるべくそれ以外の、それでいて新しい魅力を発見出来る町の選定が必須でした。
夕陽に映える町並み
美しい村チェルタルドへの単なる拠点としてだけではなく、宿泊してもスケッチが出来る魅力的な町…、マッサ・マリッティマをツアーの宿泊地に決めたもう一つの理由は「夕陽に映える町並み」ということ。
もともとは海のことを指す「マッサ」という言葉が名前についていながら、海岸から15㎞も離れていて周囲は山ばかり。海とは何の関係もなく特に特徴もなさそうなこの町は
と紹介された記事を読んだことが、この町を選んだ第2の理由でした。思うような資料が集まらず、どのようにツアーに入れて紹介するか思案する中、この言葉はきっとスケッチをする人の心に留まることだろうと思ったのです。
訪れて初めてわかる魅力
夕陽に映える町並みを期待していざマッサ・マリッティマへ。ところがツアー後半は1日に1回、集中豪雨のような激しい雨が降る毎日でした。マッサ・マリッティマに到着するその日も夕方まで雨、期待していた夕陽はありません。
町の入口から広がるガリバルディ広場に建つドゥオーモは、雨に濡れていながらその美しさをより引き立たせていました。そしてそこから続く旧市街の迷路のような小路も、石壁や石畳が雨上がりならではのつやを放っています
天候のせいもあり、観光客はほとんどいません。滞在中晴れた日もありましたが、それでも観光客に出会うことはありませんでした。町の人達はわれわれ日本人を特に珍しがることもなく、適度に放っておいてくれます。数多くの観光地があるイタリアですが、この町は観光化の垢にまみれることなく、静かに時を重ねてきているという感じでした。
ホテルと3晩通ったレストラン
グループサイズで宿泊出来るマッサ・マリッティマ唯一のホテルは、旧市街、ガリバルディ広場からの一本道を入ってすぐのところにあるHotel Il Soleでした。これ以外にグループで宿泊出来るホテルは他にありません。3つ星クラスのホテルはイタリアにしてはあっさりとした対応です。
現地手配を担うオペレーターからはホテルでの夕食となっていましたが、到着後フロントで聞くと斜向かいのピッツァリアで夕食だとのこと。なるほど、ホテルには厨房などの施設はなさそうです。そしてこのピッツァリアが、マッサ・マリッティマでの滞在をとても有意義にしてくれました。
食事はトスカーナの定番料理、ラグーソースのパスタやローストしたビーフやポークなど、特に珍しいものはなかったのですが、スタッフがとにかく陽気な人たちばかり。若い男の子や女の子がサーブしてくれ、その子たちが日本からの珍客のディナーを盛り上げてくれます。
二晩目の夜は毎日この地方を襲う集中豪雨がちょうど夕食中に来て、一時店内が停電で真っ暗になりました。そのときもすぐにローソクを用意し、持ち前の陽気さで電気が回復するまで、明るく振舞ってくれました。
おかげでローソクの明かりの中でのディナーという、ちょっと変わったイタリアでの夕食を楽しむことが出来たのです。
行くだけで楽しくなるマッサ・マリッティマのピッツァリアはIl Corso、残念ながらウェブサイトがありませんが、ホテルの斜向かいのピッツァリアです。
行き方
フィレンツェ、シエナからは鉄道でフォッローニカ(Follonica)へ。フォッローニカよりバスで約20分。
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