皆さんは、「ヨーロッパの教会をひとつ挙げて」といわれたら、どこの教会を思い浮かべますか?
ケルンの大聖堂?それとも、シャルトル?
サグラダ・ファミリアもそうだし、サン・ピエトロ寺院も有名ですね。
ヨーロッパに出かけた人なら誰でも、一つや二つは記憶に残る教会があるかと思います。でも、それらは圧倒的人気都市のランドマーク的な教会ではないでしょうか?
長年、ヨーロッパへのスケッチツアーの添乗員として出かけた筆者のこころに残る教会は、少し違います。
その中で、特に印象深かったイタリア、フランスの知られざる教会をご案内します。
ヨーロッパの教会に興味を持った訳
上述の通り、通常の観光ツアーではなく、スケッチを目的としたツアーの添乗員として、長年ヨーロッパを訪れました。
特に、建築に心得のある画家の教室のツアーを手掛けたため、ヨーロッパの建築物に特段興味を持って、見て回りました。
「次回のツアーのモチーフとなる建物はどんなだろう?」と考え、出かけるたびに取材と称して、様々な建物の写真を撮りまくりました。その写真がツアーを組む画家の興味を惹けば、次のツアー催行につながるからです。
ヨーロッパの田舎町では、こんもりとした丘の上に、町が広がっていることが特徴です。その頂上には、必ずと言っていいほど、その街のシンボルとなる大聖堂があり、遠くからその町を見るとまさに「一幅の絵」のようです。
それ以外にも、街の入り口やあちこちに、小さな教会があります。そこの住民が、普段から祈るための教会です。
日本でも、寺や神社が冠婚葬祭をはじめ、生活に密着しているように、ヨーロッパでも生活に欠かせないものです。
中でも気になるのは、巨大な教会ではなく、本当に小さな、でもずっとその町を見守り続けてきたような教会です。
建築的に特徴のある教会も見逃せません。筆者は建築のことは分かりませんが、一瞬でこころに残るような、特徴的な教会は、必ず写真に収めてきています。
最も印象的な教会|サン=ピエール教会(ブランシオン、フランス)
この教会こそ、この記事のタイトルどおり「こころに残る、知られざる教会」と言えるでしょう。
フランス、ブルゴーニュへのツアーで立ち寄ったブランシオンという、とても小さな、まるでジオラマのような村に唯一ある教会です。
業界の大先輩の著書「フランスの美しき村ーコンプリート・ガイドブック」で紹介されていて、ぜひこの教会をツアーの一つに加えようと思いました。
地元ではどう呼ばれているか分かりませんが、この書の中ではサン=ピエール教会を「天国に一番近い教会」として紹介していたことも、とても興味を惹かれた理由の一つです。
そのことは、以下記事でも詳しく書いていますので、参考まで。
シンメトリーなファサード1|ソヴァーラ教区教会(アンギアーリ、イタリア)
ツアー参加者がスケッチ中は、添乗員は自由になるため、取材の時間です。
トスカーナ地方の坂道の町、アンギアーリでは、たまたま入った食堂でガイドタクシーを手配してくれたので、歩いてはいけないところまで、くまなくアンギアーリの町を見て回りました。
この教会は、まさにそのドライバー推薦の教会です。
このようなシンメトリーなファサードは、建築の心得のある画家さんが好んで描いていたので、どの街でも気になって探したものでした。
また、9〜10世紀に建てられたにもかかわらず、この美しさはこころ惹かれずにいられません。
シンメトリーなファサード2|サン・ジョバンニ・イン・オッターヴォ教区教会(ブリジゲッラ、イタリア)
この教会も、シンメトリーなファサードが印象的な、とても古い教会です。
建造は909年、イタリア、エミリア=ロマーニャの「イタリアの最も美しい村々」に登録されたブリジゲッラ郊外に、ひっそりと建っています。
この教会を探し出すのは、少し苦労しました。ホテルの支配人は、
「郊外に素晴らしい教会があるから、見てきた方がいいよ」
と、この長ったらしい教会の名前を教えてくれたのですが、町の人に名前をいって教会のある場所を尋ねても、そんな教会は知らないと言われるばかり。
ある人が、「ああ、『キエーザ・ロマニカ』だね。」と言って、やっとのことで教会への道順を教えてくれました。
普段、この町の人はみんな、通称で教会のことを理解していたので、正式な名前なんか知らない、ということだったのです。
苦労して探し、その場所まで20分近くかけてたどり着いた時の感動は、忘れられません。
幾たびの震災から復活した教会|サンタ・マリア・ディ・コッレマッジョ教会(ラクイラ、イタリア)
最後は、冒頭画像の教会、イタリアのラクイラに建つ、サンタ・マリア・ディ・コッレマッジョ教会。
この美しさは、他に見たことがありません。
ラクイラは、2009年の大震災で、町は惨憺たる状態となりましたが、その後見事に復興を遂げました。この写真を撮ったのは、2014年。まだ、復興の途中だった時です。
正面からは分かりにくいのですが、近くによるとだいぶ崩れているところがあったり、痛々しい感じだったのですが、この教会の建つ公園の中で、これだけ威風堂々と佇む姿は、言葉になりません。
ちょうど雨が上がったばかりで、周りの緑とのコントラストがとても美しかったです。
実は、ラクイラは過去に何度も大震災が襲いました。その度に、この教会も修復を続け、今日に至っています。今は完全修復されたようですが、まだ復興途中の貴重な写真を撮ってきたと思います。
石の持つ美しさと素朴さの教会たち
ラクイラのコッレマッジョ教会は、それは美しい石を組み合わせた、その色合い。
アンギアーリのソヴァーラ教区教会は、あまりにも素朴な石を積み上げた、それでいて歴史を感じさせる風合い。
どの教会も、その土地を訪れ、地元の人たちとの交流の中で教わり、自らの足で歩いてたどり着いた教会たちです。
木造建築の日本とは違い、すべて石造りでありながら、これだけ違った様子を見ることができ、つくづくこの仕事をしていて良かったと感じています。
同じように世界を駆け回るビジネスマンだったら、このように知られていない教会など、見る機会もないかもしれません。
まだ紹介したい、知られざる教会はあるのですが、長くなるのでこの辺で。
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