まさかのパンク(自分たちではないが)
7月10日、マラーノ・ラグナーレからグラドへ、約40キロ。
アドリア海沿いの街から街への移動で、このコースのハイライト、グラドまでの海上の一本道が魅力の日だ。
一緒に同じルートをめぐっているオーストリア人のグループとも顔馴染みとなり、途中で追い越し追い越される時には挨拶を交わすようになる。
ちょうど中間地点のチェルビニャーノ・デル・フリウリに近づいた時、ご夫婦で参加していたオーストリア人グループが途中で止まっていた。
何か様子がおかしいので尋ねると、ご主人のバイクがパンクしたらしい。ツアー会社に連絡したのだが、代わりのバイクを持ってくるまで2時間かかるとのこと。
ツアー会社はヨーロッパ内にいくつかサポートステーションを設けているが、北イタリアはお隣のオーストリア、インスブルックから来るのだそうだ。
「もしこれが自分たちだったら」と思うと、少し困惑する。2時間もツアースタッフが来るまで待っていると、目的地に到着するのは夜になってしまうのでは?
そのあと少し会話を交わしてその場を出発し、自分たちはグラドを目指す。
ようやくグラドまでの海上の一本道にたどり着いた。日差しは強いが、畑の中よりは格段に気持ちがいい。
一本道が終了するとグラドに到着、この日も4つ星ホテルに宿泊だ。フロントでガレージの場所をきいてバイクを停め、チェックインを済ませる。また、最上階の部屋だ。
ところが、この日は荷物がまだ届かない。汗だくのウェアを着替えたいのだが、荷物を待つしかない。ホテル並びのヨットハーバーが見えるバールで軽食の昼食をとって部屋に戻ったのだが、やはり荷物は届かない。
午後4時過ぎ、初日ウディネに説明に来たスタッフが荷物を届けにきた。彼が来ているということは、パンクをしたご夫婦の代車と参加者の荷物の両方を持って来たのだろう。
シャワーを浴びて着替えた後は、ハーバー沿いの賑やかな通りにあるレストランのオープンテラスで、海沿いならではのシーフードの夕食で1日を終える。
途中ユネスコ世界遺産に登録されたアクイレイアという街もあったのだが、毎日観光をしている暇はない。暑ささえ凌げるなら、もう少しいろいろと見て回れるのかもしれないと思った。
イタリアの美しい村、グラディスカ・ディゾンツォ
7月11日、サイクリングもあと2日だ。
相変わらず雨が降る気配はない。この日の気温は35℃。
グラドでは、海岸沿いのサイクルパスからスタート。朝からビーチでくつろいでいる人を横目に、目的地グラディスカ・ディゾンツォを目指す。
ビーチを過ぎると、今度はラグーン沿いの鳥類保護区を走る。そして、アドリア海を見下ろす少し高台になったサイクルパスに出る。
前日、アクイレイアで出会った1組のカップルは、今日も同じルートを走るようだ。どうやら、自分たちのバイクでこのツアーに参加したのかもしれない。e-bikeではない自転車で、この距離を走ることができるのだろうか?と勝手な心配をしてみる。
アドリア海沿いのサイクルパスを過ぎて内陸へ向かう。海沿いは風が気持ちよかったが、内陸に入ると暑さが際立つ。また、葡萄畑とトウモロコシ畑の連続だ。
この日の目的地、グラディスカ・ディゾンツォは、「イタリアの最も美しい村々」に登録されている。今回の旅行でも、フリウリに入る前にトスカーナの美しい村、ブオンコンベントを訪れた。筆者のある意味ライフワーク的な「美しい村」めぐりは、このサイクリング・ツアーでも続く。
グラディスカの名前は古代スロベニア語の「要塞」から由来し、ベネチア時代(15世紀)、オーストリア時代(17世紀)、ハプスブルク時代(19世紀)、イタリア時代(20世紀)の4つの歴史的影響を受けた町。西北のフリウリ地方、南のピシアカリア地方、東のゴリツィア地方とを結ぶ交通の要衝でもあり、この州の東の中心地だ。
「村」というよりは「町」で、とてもではないが、たった1泊で美しい村の良さを探すことは難しかった。いつか再び訪れる機会があるのなら、ゆっくりと歩いてみたい。
ホテルは町の東側、大きなウニタ・ディタリア広場に面するHotel Trieste、4つ星だ。
チェックインの後、ホテル近くで遅めの昼食を取ることができるところを探し、歩いて2〜3分のバールに入った。ここはレストランでもあるらしく、夜改めて来ることにした。
夜、再び先ほどのレストラン、SOLITO POSTOを訪れる。レストランとはいっても、気さくな定食屋といった感じだ。ここでフリウリ地方のメニューの夕食。
会計の時、オーナーらしき人が「あなたたちは日本の方ですか?」と英語で聞かれたので「そうだ」と答えると、
「私の娘が日本にあるイタリア大使館に勤めているんです」
と教えてくれた。それから二言三言話をして店を出、周辺を撮影していたら、店から出てきてあらためて手を振ってくれた。
北イタリアの、ほとんどオーストリアとスロベニアとの国境近くの町と日本とのつながりがあることを知り、改めて日本とイタリアは切ってもきれない関係なのだと思った。
サイクリング最終日、ウディネへ
7月12日、サイクリングの最終日。
相変わらずの暑さ、気温は35℃だ。
実は、この日のルートが最も長く、ウディネまで約65キロある。今まで50キロまでは走ってこれたものの、この先は未知の距離。果たしてウディネにたどり着けるのか?
一方、この日のルートはこのサイクリングのもうひとつのハイライトでもある。
フリウリワインでも有名なこの地方の、最も有名なコッリオワインの生産地を通るルートで、スロベニアとの国境まで走ることになる。
最初は平坦な道を進むが、途中からアップダウンが増え、コッリオワインの葡萄畑がちょうどその頂点になる。道路のすぐ脇まで葡萄の木が生えていて、その木越しに一面の葡萄畑を見下ろすのは格別だ。
すぐ近くにはスロベニアとの国境を示すサインが見える。振り返るとイタリアを示すサインが。
ここからは下り坂が多くなる。
そしてちょうど昼頃、中継地点のチビダレ・デル・フリウリに近づいた。
この辺も葡萄畑が多いと思ったら、畑の途中に六角形の不思議な小屋のような、ロッジのようなものが見えた。
ここは葡萄畑でのグランピングが楽しめる、Agriturismo Wine&Beer Alturisという施設で、ウェブサイトを見るとかなり興味を惹かれる。
いくつかあるロッジの中で、1つだけハートの形をしたロッジがあった。アモーレの国イタリアならではないだろうか?葡萄畑以外何もないところで、二人きりで永遠の愛を確かめ合うのも良いかもしれない。
ここからチビダレまでの途中には、ひまわり畑もあった。スペインのひまわり畑と比べると小ぶりだが、イタリアの夏を感じるエリアだ。
チビダレ・デル・フリウリに着いたのが正午近く。
有名な「悪魔の橋」手前まで来たときに、その向こうに佇むサンタ・マリア・アッスンタ教会が、正午を告げる鐘を鳴らす。鳴り止むまでかなり長い。
近くのケバブ屋さんで軽く食事をして、また走り出す。ちなみに、フリウリに来る前に滞在したソットマリーナでもケバブ屋さんがあった。その前もどこかで見かけた記憶がある。イタリアでは、意外にケバブサンドが人気なのかもしれない。
食事の後は、ひたすらゴールを目指して走る。
途中雲行きが怪しくなってきた。初日のゲリラ雷雨を思い出し、それにあたる前にはウディネに到着したいと急ぐ。
65キロの距離もなんとか走り切り、ようやくゴールのウディネに到着。最初に宿泊したホテルに着くと、オーストリア人のグループの皆さんも到着していたようで、お互いの完走を讃えあった。
e-bikeのおかげか、足がガクガクいうほどの疲れもない。電動アシストがあれば、総距離300キロもなんとかなるものだ。
帰国
7月13日、ウディネのホテルをチェックアウト。
実はフリウリ地方にはスロベニア国境近くのトリエステしか空港はなく、それ以外の最寄空港はベネチアかトレビーゾになる。日本への帰国はどちらかへ移動しなければならない。
ヨーロッパ・サイクリング・ツアーは、必ずしも出発地と到着地に空港があるわけではないので、計画する時には前泊や後泊が必要になる場合があることも考慮した方がいい。
我々はベネチアを選んだ。ローカル電車で再びベネチア方面へ移動し、ベネチアでこの旅行を締めくくった。
全ルートの動画は以下YouTubeにて。
参加してみて感じたこと
ツアーで設定されたホテル一覧
ツアー会社で設定されたホテルは、どれも使い勝手が良く素晴らしかった。
同じ「フリウリ8日」を申し込んだとしても、その時々のホテルの空き状況により、違うホテルになる場合がある。また、夕食付のオプションを申し込んだ場合、ホテルにより対応できないこともあるので、ご注意を。
ウディネ:Suite Inn Udine
サン・ダニエーレ・デル・フリウリ: Hotel San Daniele
コドロイポ:Nodo Hotel
マラーノ・ラグナーレ:Hotel Joranda
グラド:Hotel Hannover
グラディスカ・ディゾンツォ:HT Hotel Trieste
この体験記をお読みになって、ヨーロッパ・サイクリング・ツアーに興味を持たれたり、参加したいと思った方は、以下へお問い合わせを。
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